我が子の子育て期には「今ここでこの子の根性を叩き直しておかないと、将来ろくな人間にならないぞ」と何度も思った私ですから、親御さんのそのようなお悩みには大いに共感できるのです。気持ちの置き場が見つからなくて私にアドバイスを求めてくださる方には、
①持って生まれたもんは強力なのでとことん闘うと疲れるだけ。
②大抵、今短所に見えているところから先々その子の美点となる芽がでる。
③厳しすぎたかな、甘すぎたかな、という葛藤こそ子育て
とこのようなことをお返しします。しかし言葉はほとんどの場合助けにならないものです。親御さんが迷いながら子育てに取り組むように、私たちの子育て支援も実践ごとに試行錯誤をしています。
支援はいつも手探りですが、仕事ができたと思う時はこんな時です。広場や野外活動での子どもさんと親御さんの様子、最初にどちらかが変わり始めて、その後親子は相乗的に変化するのです。ゆっくり何年もかけて変わることもあれば実にドラマティックな変貌に立ち会うこともあります。
具体的に言うと、例えばとても人見知りな子どもさんがいるとします。ママは最初、広場へ連れて行っても膝の上から降りない我が子を、こんなことで大丈夫かしらと思っていらっしゃいます。しかしそうであっても家に帰ると広場のお歌を歌ったりするので少し嬉しくなります。そのことを広場のスタッフに話すと、「えー、〇ちゃんお歌上手なの、いっぺん聞いてみたいなぁ」とスタッフが笑います。スタッフとママが楽しげに笑っているので〇ちゃんは安心して、前から触ってみたかったおもちゃを取って急いでママのお膝に戻りました。次に広場を訪れた時、スタッフは前回〇ちゃんが気に入っていたおもちゃを覚えていて「〇ちゃん一緒にこれで遊ぼうよ」と声を掛けます。ママはスタッフがちゃんと覚えていてくれたことが嬉しくてニコニコしています。こんなことが何度か重なるうちに〇ちゃんはスタッフとの触れ合いを喜ぶようになります。〇ちゃんはやっぱり人見知りな性格ではありますが安心できる人との間にはしっかりと関係を結べる人だということがママにも分かり、幼稚園の見学会で固まっていた〇ちゃんの様子もほほえましく見ることができました。
〇ちゃんとママは架空の親子です。また、声掛け一つにしても台本通りにいくことはありません。ただ共通していることは親子が安心して楽しみをもって過ごすことが変化の下敷きになっているということです。小さな小さなコミュニティーの中で親がゆるみ、子がゆるみ、そこに伸びしろが生まれる。そうです、変化は成長と言って差し支えないと思います。不安そうに広場の片隅に座っていたママの成長をじっくりと支援したスタッフにも成長があり、こうして人は安心の関わり合いの中で生涯成長し合うものだと思います
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